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無農薬野菜収穫&吉兆風バーベキュー 2005/6/26
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2005/8/1公開
TEXT & PHOTO by Chiiho SANO

食の価値を命の価値で考える

 私たちは、食べものの生産現場をどれだけ知っているでしょうか。知ろうとしたでしょうか。1本のきゅうりやオクラから、涼感溢れるナスのお浸しから、薬味として添えられている大葉から、夏の厳しい日差しを浴びて実をつける田を思い、それに関わる全ての人に思いを馳せることができるでしょうか。潮風や土の匂い、畑を耕す人の汗。総てが生命を噤む源となることを、どれだけ意識しているでしょうか。生産者が何を想い、どういうものづくりをしているかを知ろうとすること。生産者の努力に感謝し、生きものの命をいただいて生かされていることへの感謝の気持ちを持つこと。

 「生産と消費」−本来は”相思相愛”であるべき関係が、不信感が先に立つ”片想い”になってしまいました。お互いに疑心暗鬼で今一つ信頼感が持てていません。それは相手が見えないからではないでしょうか。見えない相手に想いは伝わらないし、育たないでしょう。

 経済性や効率を最優先にせず、本当に良いものを、本当に美味しいものを提供するために、環境を守り、未来の子供たちに自然を受け継いでもらうために、本気で、必死で、有機栽培に取組んでいる人たちがいます。今日私たちが、それらの食材を紹介したり、提供したりできるのは、手間ひまかけて、愛情込めて、今だけでなく、未来のことも考えて、一生懸命、野菜を作り続けている、生産者の方々のおかげです。

長澤農園

 長澤農園は、太秦において代々農業を営んできており、現在17代目にあたります。学卒後の1976年3月、家業を継ぐべく農業を始めました。始めた頃は、慣行農業(農薬・化学肥料多投栽培)を行っていました。ナスの場合、1週間に1回、反当り500〜600リッター程度の農薬を散布していました。農薬の撒かれた畑では、腹を上にして痙攣する蛙、目をむいて伸びた蛇などの姿を毎日のように見ていました。また、自家消費する野菜は農薬がかからないように避け、散布後の野菜は自家消費しませんでした。そんな光景を余所目に日々慣行農業を行っていましたが、「生物の命を絶つ薬が人間に良いはずがない」と、15年ほど前から慣行農業に疑問を持ち始めました。
そこで、農薬を少しでも減らした栽培を試みました。しかし、農薬が足りないと虫や病気が一気に広がり、出来た野菜は卸売市場で買い叩かれる始末。仕方なく省農薬栽培を断念しました。

長澤農園
長澤農園の畑
農業と人生の転機

 その後、5年程経って、一つの転機が起きました。私自身が、ナスの農薬散布中に、2年続けて(1986, 1987)体調を崩し、医院で毒の点滴を受けることになったのです。祖父の代からの主治医は、「此の様な事が生じる仕事は、もう止めろ。もし続けるならば、おまえの体に責任が持てないので、来院するな」とまで言われました。
 太秦は、京都市内有数のナスの産地で、例に漏れず我が家も親の代からナスが主品目でした。主品目のナス栽培を断念する事は即ち、忽ちの生活にも跳ね返ってくることを意味します。仕事にも体力にも自信が持てなくなった私は農業を辞めようと思ったほどでした。当時、子供もまだ幼く、日々の暮らしを何とか続ける必要があったにも関わらず、将来にまったく希望が持てなくなった時期でもありました。
 しかし、何もしないわけにもいかないため、背丈の高いナスや背丈の低いネギ、菜類を作り始めました。しかし、結局また従来の慣行農業をせざるを得ず、農薬散布も行っていました。
「自分の体を犠牲にし、自分たちが食べたくない野菜を作り、食べたくない野菜を出荷する。どう考えても明らかに間違っているし、何よりも自分自身納得がいかないことをしている。」 毎日が葛藤の連続でした。

スッと伸びたオクラ   出荷前のオクラを手に
安全で納得のいく野菜を
茄子についてのレクチャー
をする長澤源一氏

 「自分が食べられない野菜を作ることが本当に良いことなのだろうか?」この問いかけに対する答えが今の私の姿です。つまり、有機(無農薬)栽培です。 決意を新たに始めるも、周りに有機栽培を行っている農家は無く、暗中模索の状態でした。害虫駆除のために土を焼いたりネットをかけたりしても全く収穫できず、結果は惨憺たるものでした。春作、秋作も従来とは凡そ比べ物にならない収穫量で、冬作のみ辛うじて七分作程度と、「言うは易し、行なうは難し」を身をもって体験しました。しかも、このような時期は1年では終わらず、悲惨な状態が2〜3年も続いた始末で、家計も大赤字になりました。
 林義雄・岩城由子共著「京の野菜」に拠りますと、京都の野菜つくりで最も大切なことは、限られた農地の利用方法だそうです。第1は、「土地を永続的に利用するために、連作障害を避けること」。第2に、「限られた土地からできるだけ多くの生産をあげること」となっています。また、そのための具体的な技術として、@違う野菜の作付順を時間的にうまく組み合わせる輪作、A野菜の植え方。すなわち、畦の野菜の並べ方、B野菜本来の味を出すための肥料、そして最後がC病虫害の対策の4つが必要だそうです。 長澤氏は、農薬を使わず、比較的病気に強い作物を作る、害虫を手で捕殺する、大量発生させないために多くの品目を作る、自然界の天敵を利用し、剪定や栽培資材の工夫など、長年の努力と研究を重ね、自然に近い状態で栽培しているそうです。
 農薬を使うことで、害虫や病気はその農薬に抵抗性を持ち農薬と病害虫のイタチゴッコとなり、そのことが結果的に自然界のリズムを崩すことになるのです。

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長澤農園

所在地:京都市右京区太秦石垣町19
TEL:075-881-0479
FAX:075-881-0480